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​倫理規定

前文

 産業コーチは「パーソナリティ発達支援の専門家」として、社会を構成する多様な人々がより自分らしくなるための自己の発達や心理的葛藤の解消に寄与し、あらゆる関係性の中で個と個が柔軟に主体性を発揮することによって、社会課題の解決や新たな価値創造が自然に促進される建設的かつ生産的な社会の実現を目指す。これをもって社会福祉と経済の増進に貢献する。

 上記の社会的役割を担う産業コーチは、個人のパーソナリティ発達を支援する専門家という立場から、公共世界への関心を自ら持ち、それそのものを社会的責任として職業倫理を確立する。また、目的を遂行しやすくするうえで、社会的信頼の獲得と専門職集団としての成長を図り続けるため、以下に倫理原則および倫理規定を定め、日本産業コーチ協会およびその成員はこれを遵守する。

倫理原則

(1)社会的市民によるコントロールの原則

 専門知と専門的技能の使用権限を専門職である産業コーチが全面的に掌握するのではなく、社会を構成する人々のコントロール下に置くことで、人格の尊重や社会的健全性を維持する。そのため産業コーチは、情報を開示し説明責任を果たした上で、相手の自己決定に基づく同意を得る。特に、見えないリスクや専門性のブラックボックス化を減少するよう努める。

 

(2)可謬(かびゅう)性の原則

 見えないリスクや、常識を覆す発見が潜在的に溢れるこの世界では、人はみな、確実な知をもつことはできず、推測知に基づくことになる。そのことから、すべての誤りを回避することはできない。そのため産業コーチは、他者の誤りに寛容であり、自らの誤りから学びを得ることを義務として負う。特に、自らの誤りをなかったこととするのは、最も避けなければならない。知的素直さを持ち、探究心と自己批判的態度で省みることにより、自らの学びを深化し専門性の向上に努める。

 

(3)合理的討論の原則

 客観的な知は、努力の限りを尽くしても一人で獲得することは困難であり、判断を誤る可能性は常につきまとう。そのため産業コーチは、謙虚さと探究心をもって、課題を発見し修正するために、他者からの合理的批判も必要とする。例え合意に至らなかった場合でも、より良い理解に進捗することができる。合理的批判を行う際は、個人的な価値判断に偏らず、客観的真理に接近するという哲学に導かれた特定の言明および仮説、論証となるよう努める。

 

 これらの原則を前提に、産業コーチ一人一人が絶えず省みることで学びを深め、それを互いに共有して吟味することによって、福祉と経済の観点から、集団的に形而上学的および形而下学的な探求を行い、よりよい社会のあり方を見いだすと共にその発展に貢献する。

 以上の倫理原則を職能団体である日本産業コーチ協会およびその成員は遵守する。

倫理規定

第1編 総論

第1章 総則

(社会的役割)

第1条 産業コーチは、社会人を対象とした心理支援、コンサルテーションおよび調査研究などにおける専門的な技能や知識をもち、社会を構成する多様な人々の自己の発達や心理的葛藤の解消に寄与し、主体性の発揮や関係性の充実の向上を図るための心理支援を行い、これを社会的役割として社会福祉と経済の増進に貢献する。

2 産業コーチは、個人を社会的発達の観点から捉え、パーソナリティ発達の支援を行う。組織や社会は、その個人の関係性の場と位置づけ、関係性の中で建設的に主体性を発揮することをもって自己実現とし、その結果として組織も含めた社会福祉と経済が増進されることを目指す。
 

(責任)

第2条 産業コーチは、パーソナリティ発達支援の専門家として、たゆまぬ内省や受容的他者への認識により培われる洞察力と心理的柔軟性をもって、自他の尊厳を重んじられる姿勢や、事象および情報を偏見なく捉えて扱う力を、問題解決の重要な資源として育む義務を負う。

2 産業コーチは、厳しい問題に直面した場合であっても、いつでも自身の平静な心の状態を取り戻せるよう維持し、認知的疲労の程度が著しく大きくならないよう普段から訓練を重ねておかなければならない。

3 産業コーチは、専門的支援において自身の認知機能や心理状態および情動を資源とする。そのため、認知機能の低下や心理的不調によってサービス提供の健全性を欠き、クライエントに悪影響を与えたり、不利益を及ぼす恐れがある場合には、サービス提供の一部あるいは全部を差し控えなければならない。
 

(基本的立場)

第3条 産業コーチは、サービス提供を行うにあたり、人種、国籍、言語、民族性、年齢、性別、文化、宗教、政治的思想、信条、性的指向、障害、社会経済的地位等により差別しない。

2 産業コーチは、社会的・文化的・歴史的に形成された観念や慣習は、より良い社会に向かう過程で変化し得るものとみなし、その観念や慣習の影響を絶えず受けて利用している存在として、日頃から自身を省み続け、その認識に基づく発言や判断を行う。

3 産業コーチは、サービス提供を行うにあたり、職能団体の一員として倫理規定を遵守するとともに、法律に反する行為またはそれに加担する行為をしてはならない。

4 産業コーチは、コーチングサービスの提供にあたり、自己の信念や価値観および思想が発言や態度を含む行動に表れやすいことを自覚し、クライエントにはその人の特性や経験、現実にいたるまでの状況の中で適応を図るために必要としてきた信念や価値観および思想があることを認め、他者の価値観からクライエントを特定の方向へ導いてはならない。

5 産業コーチは、人を管理したり操作する道具としてコーチングを利用しない。

6 産業コーチは、職業で培った専門的技能および知識を提供するボランティア活動を、公共善のために対価を求めずに社会貢献の一つとして積極的に行うよう努める。

 

(専門的資質の向上)

第4条 産業コーチは、専門家としての責任を全うするため、専門的知識と技能、最新の研究内容およびその成果ならびに職業倫理的問題等について、研鑚を怠らないよう自らの専門性の資質向上に努める。

2 産業コーチは、社会を構成する人々の個の発達・成長および心理的葛藤の解消を支援する専門家という領域に立ち、それ以外の領域については非専門家として自らの社会への関心を持って、謙虚に他の専門家から学ぶことに重きを置き、自身の専門性をより活かすための素地を育むよう努める。

3 産業コーチは、クライエントの福祉および利益に資する責任を自覚し、背景とする諸理論を学びつつ、実践を通して事例研究を行い、自らの職業アイデンティティーの確立と成熟を図る。
 

(社会的信頼の確立)

第5条 産業コーチは、クライエントとの信頼関係を積極的に形成する。

2 産業コーチは、個人と組織に関する守秘義務を負い、個人のプライバシー権を最優先で尊重する。

3 産業コーチは、クライエントおよび他の専門職、企業団体等の関係者との信頼関係確立のため、職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならない。

4 前項において、クライエントの同意を得るか、または正当な理由に基づきクライエントの秘密を開示する場合であっても、関係者の利益に配慮し、クライエントが負う被害を最小限に抑えるよう努める。

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第2編 行動規範

第2章 産業コーチの行動倫理

(実践とその限界)

第6条 産業コーチは、受けた教育や訓練および職業経験などに基づき、自らの能力の限界をわきまえ実践する。

2 産業コーチは、サービス提供において科学的専門的な判断を下す場合や、学術的専門的試みに取り組む場合は、科学的専門的に得られた知識を拠り所とする。

3 産業コーチは、サービス提供において能力の限界を自覚した場合は、適切なスーパービジョンあるいは他分野の専門家のコンサルテーションを求め、サービス提供者の変更が妥当であれば、クライエントの同意を得て、他の産業コーチや他の専門家に紹介し、必要があればその移行が滞りなく行われるよう努力する。

4 産業コーチは、適切な文献を読んで理解することや、会議や学会およびワークショップへの参加や追加の講習を受ける等して、自らの実践する分野における現在の科学的および専門的な情報の知識を保持し、技能を維持するための実践と継続的な努力を行う。
 

(面接記録と個人情報の保護)

第7条 産業コーチは、サービスの質の向上のために、面接記録を作らなければならない。

2 面接記録は、必要に応じていつでも取り出せる方法により、5年間は厳重に保管する。また、面接記録は特定の個人を識別できる個人情報として適切に管理し、秘密の漏洩があってはならない。

3 産業コーチは、面接記録を調査や研究のために利用する場合、その使用目的と限定される範囲を説明したうえでクライエントの許可を得るとともに、個人が特定できないよう慎重に扱う。

4 産業コーチは、提供セッションを録音または録画する場合、クライエントから適切に許可を得なければならない。収録データを異なる目的で用いる場合は、その目的のための合意を新たに取り付けなければならない。

5 産業コーチは、自分自身や他の産業コーチのサービス提供をより社会的に受け入れてもらいやすくするため、説明責任を維持し、学術的機関の要件や法律を満たす形で、自身の専門的科学的業績を書面に記載する。 

6 産業コーチは、裁判における合理的精査に耐えられる詳細さと質を備えた証拠書類を、作成し保持する責任を持つ。
 

(機密性の保持)

第8条 産業コーチは、法律や倫理規定、専門的または科学的関係によって機密性が確立されていることを認識し、クライエントおよび関係者の機密性を保護するために慎重な予防策を講じる。 

2 産業コーチは、人格の尊重の観点からプライバシーの侵害を最小限に抑えるため、書面および口頭または電子による報告、相談、その他の手段でコミュニケーションを行う場合、その目的に関連する情報に範囲を限定して取り扱う。

3 産業コーチは、サービス関係やコンサルテーション関係において獲得した機密情報について話す場合は、適切な科学的または専門的目的に限定し、かつ明確に関係する者との間でのみ取り扱うようにする。 

4 産業コーチは、クライエントおよびスーパーバイジーについての識別情報(書面、写真、またはビデオ)を、ソーシャルメディアを含む電子メディア内で、第三者又は不特定多数の人物の知るところとなる可能性のある情報を、共有または作成してはならない。

5 産業コーチは、法律で義務づけられている場合を除き、または法律によって妥当な目的のために許可されている場合を除き、クライエントの同意なしに機密情報を開示することはない。

6 産業コーチは、アセスメントを目的として他機関から情報を取得する場合や、他機関への情報提供を行う場合は、事前に同意書にクライエントの署名を得る必要がある。
 

(コーチング業務)

第9条 産業コーチは、サービス提供において、その専門性を保持しつつ概念的な体系に従い、サービス受益者であるクライエントが充分に理解できる言葉を用いるようにする。

2 産業コーチは、個人的な問題や葛藤がその効果を妨げる可能性があることを認識し、個人的な状況が提供するサービスの品質を危うくする恐れがある場合、そのサービス提供を控える。

3 産業コーチは、十分に訓練を受けていない心理テストは実施しない。

4 クライエントに求める同意については、文書によって交わされることが望ましい。
 

(提供サービスの効果)

第10条 産業コーチは、自らのサービス提供の効果について、個別にクライエントの立場から事実に基づいた検証を行い、自らのコーチングサービスの改善に努める。

2 産業コーチは前項の目的のために、積極的にスーパービジョンを受ける。

3 産業コーチは、自身の技能や産業コーチングの効果を誇張し、クライエントあるいはその関係者に過大な期待を持たせてはならない。
 

(オンラインでのサービス提供)

第11条 インターネットを介したビデオ通話等でコーチングサービスを提供するにあたっては、倫理的、法的、提供サービスの質などに影響する利点と欠点とを十分に考慮し、必要な配慮を講じる。

2 前項において、オンラインでのサービス提供開始にあたっては、想定されるクライエントの利益とリスクについて、あらかじめクライエントに十分に説明する。

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第3章 クライエントとの関わり

(クライエントとの関わり)

第12条 産業コーチは、サービス提供において、人種、国籍、言語、民族性、年齢、性別、文化、宗教、政治的思想、信条、性的指向、障害、社会経済的地位等その他法律で禁止された何らかの理由に基づいて、差別をしてはならない。

2 産業コーチは、人種、国籍、言語、民族性、年齢、性別、文化、宗教、政治的思想、信条、性的指向、障害、社会経済的地位等におけるクライエントとの違いが、提供するコーチングサービスに著しく影響を及ぼす場合、産業コーチは適切な訓練またはコンサルテーションもしくはスーパービジョンを受けてその課題の解消を図るよう努める。

3 産業コーチは、クライエントの関係する人物に対してクライエントが嫌がらせや屈辱を与える行動に、意図的に関与してはならない。 
 

(サービス提供の決定と料金)

第13条 産業コーチは、サービスを求める個人のニーズや健康状態を可能な限り把握し、産業コーチ自身のこれまで受けた教育や訓練、経験、提供可能な資源、そして倫理規定の方針に基づいて、対応可能であると判断できる場合にのみ、その要望を受け容れる。

2 産業コーチの報酬の支払い方法は、法律に則ったものであり、料金の虚偽表示をしない。

3 クライエントの経済状況が変化した場合、サービス提供への支払いについてクライエントに再度確認をとらなければならない。
 

(サービス提供者の変更とリファー)

第14条 産業コーチは、雇用関係または契約関係を結んでコーチングサービス提供に従事させている場合、その従事していた人物が雇用または契約関係を終了する時には、担当していたクライエントに対するサービス提供の責任が滞りなく果たせるよう、サービス提供者の変更など対策を講じなければならない。

2 産業コーチは、クライエントの意思に基づいてサービス提供を終結する。

3 産業コーチは、クライエントを放棄しない。 何らかの理由で中断する場合、事前に産業コーチは、クライエントのニーズについて把握し、必要に応じて専門機関へのリファーを提案して、同意が得られた場合には、合理的な措置を講じる。

4 産業コーチは、クライエントの相談内容から医療や生物学的な側面に影響を受けている可能性を考える方が妥当だと推量した時、医療機関への受診を勧める場合がある。
 

(インフォームド・コンセント)

第15条 産業コーチは、サービス提供の初期もしくは必要な段階において、クライエントに十分に説明したうえで同意を得てサービス提供を進める。

2 前項におけるインフォームド・コンセントの内容については下記の項目を含む。

(1)産業コーチングの役割

(2)依拠する諸理論等

(3)サービス提供の料金と支払い

(4)サービス提供の期間と終結

(5)サービス提供の中断

(6)守秘義務とその限界

3 産業コーチは、開発中あるいは効果が実証されてない技法をクライエントに利益があると判断して用いる場合、クライエントにその技法の利点や欠点について十分説明し、承諾が得られた範囲内で使用しなければならない。
 

(二重関係の回避)

第16条 産業コーチは、専門家としての判断を損なう危険性あるいはクライエントの利益が損なわれる可能性を考慮し、クライエントとの間で、私的関係およびビジネス的関係等の二重関係を避けるよう努める。

2 産業コーチは、自らの影響力や私的欲求を常に自覚し、クライエントの信頼感や依存心を不当に利用しないように留意しなければならない。職業的関係の範囲でのみサービス提供は実施され、クライエントやその関係者との間に私的関係をもってはならない。

3 産業コーチは、二重関係の潜在的に有害な影響に常に敏感でなければならない。不測の要因によって、多重関係が生じた場合、解決するよう努力する。

4 産業コーチは、二重関係を構成するのを回避するため、クライエントからの贈り物を受け取らず、またクライエントに贈り物を提供しない。

5 産業コーチは、二重関係の潜在的かつ有害な影響に気付いた時、クライエントにそのことを通知する。

6 産業コーチは、クライエントとの間で性的親密性を持たないよう努める。もしそのような可能性が生じた場合は、サービス提供を中止するか、サービス提供を他の産業コーチに変更する。

7 産業コーチは、専門的関係が正式に終了した日から少なくとも2年間は、クライエントとの性的関係を控える。
 

(自己決定権の尊重)

第17条 産業コーチは、クライエントが自己決定する権利を尊重する。

2 前項の目的を達成するため、産業コーチはクライエントに必要かつ十分な説明および情報提供を行う。

3 産業コーチは、クライエントが適切な行動を取れると判断する場合には、クライエントにとっての自己決定の意味等を自身で吟味できるよう援助する。
 

(危機介入)

第18条 産業コーチは、クライエントに自傷他害の恐れ、または重大な不法行為を犯す恐れを予見した場合には、速やかにその防止に努めなければならない。

2 前項の防止のための行為は、そこに緊急性が求められ、その行為によりクライエントまたは被害者の安全等が守られる場合は、正当な行為として許される。

3 前項においても、クライエントの不利益を最小限に抑える。

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第4章 他の企業や団体との関わり

(個別面接と組織への働きかけ)

第19条 産業コーチは、企業団体との契約に基づいて、その従業員をクライエントとしてサービス提供を行う場合、クライエントの福祉と利益を最優先とし、必要に応じて企業団体へ職場における環境調整および関係調整を積極的に働きかける。

2 前項の役割を果たすため、産業コーチは、労働法、産業組織論、社会科学、現象学、行動分析学、認知神経科学ならび生理学等の学識に基づいて、調査、提言できる能力を培うよう努める。

3 産業コーチは、前2項の役割を果たすため、日頃から他の専門家とのネットワーク形成を図るとともに、必要に応じて協働を組織し、その一員として活動する。

4 産業コーチは、企業団体との契約に基づいて、その従業員をクライエントとしてサービス提供を行う場合、サービス提供の最初の段階で関係する人々とその関係性や、想定できる潜在的な葛藤について可能な範囲で明確にする。さらに、産業コーチの役割や提供するサービスに期待できる範囲や、守秘義務とその限界について、クライエントや関係する立場の人々に説明する責任を負う。 
 

(安全配慮義務への協力)

第20条 産業コーチは、企業団体との契約に基づいて、その従業員に対しサービス提供を行った場合、事業者から安全配慮義務に基づいて相談内容等の開示を要求された場合、開示資料の使用目的が健康管理上必要不可欠のものかを慎重に検討したうえで判断し、双方の利害対立を調整する。

2 前項の利害調整を行うにあたり、相談内容を開示する場合には、次の要件を満たさなければならない。

(1)目的の正当性 目的が健康管理に限定され、人事考課等の他の目的に使用されないこと。

(2)手段の必要性 健康管理を目的とした場合であっても、他の手段によってその目的が達成できないかなどを検討したうえで、その必要性を満たしていること。

(3)開示方法・内容の妥当性 特定の従業員の相談内容であることが判別できない方法、内容であること。
 

(組織が関わる倫理問題の解決)

第21条 事業者とクライエントの間に対立、紛争が生じている場合、産業コーチは、関係諸法令に照らし人権侵害がないかを判断する視点に立って対応する。

2 前項の場合、産業コーチは倫理規定を自らの指針として両者の調整を計らなければならない。その際、産業コーチの立場から仲裁の立場に変わることについて双方に説明し、理解を求めて解決にあたる。

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第5章 社会との関わり

(情報発信の責任)

第22条 産業コーチがマスメディアに対して意見を発表する場合は、個人的意見であることを明示し、日本産業コーチ協会としての公的発言は差し控える。

2 産業コーチが、専門的実践および調査研究活動を促進するための公的発言を、他の人々に創作を任せたり従事させる場合、そのような発言に対する専門家としての責任を保持する。

3 産業コーチは、自ら監督していない他の人々(雇用主、出版社、クライエント、編集者等)が、産業コーチの実践や専門的・科学的な活動について、誤解を与える発言をすることを阻止するため、相応の努力をする。 

4 電子メディア(動画、eラーニング、ソーシャルメディア、情報の電子伝達等)を使用する産業コーチは、本規範を遵守するために電子メディアのセキュリティおよび制限に関する知識を絶えず取得し、必要な措置をする。 

5 産業コーチは、ソーシャルメディアを含む電子メディアを使用して公的発言を述べたりプレゼンテーションを行う場合、書面による同意がない限り、クライエントや職務の過程で得たサービスの受益者およびその関係者に関する個人情報を、開示してはならない。 

6 複数の参加者がいる場に登壇する産業コーチは、その場が電子メディアを介するものであれ、可能な限りその場の参加者のプライバシーを保護し、身元確認ができる参加者が議論によって傷つけられないよう、その状況に適した対策をとる。 

7 センセーショナルな自殺報道について、模倣自殺や自殺念慮を抱える人の自殺の危険性を高めてしまう可能性を考慮して、ソーシャルメディアを含む電子メディアへ当該の報道に関連する情報発信を繰り返すことや、自殺方法についての詳細な情報、関連する写真や映像、報道しているデジタルメディアのリンクを用いて発信することを行ってはならない。

8 産業コーチは、原作者または著者の著作物および資料を引用する場合は、その出典を明示しなければならない。

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第6章 科学との関わり

(研究の手続き)

第23条  研究を行う産業コーチは、認められた範囲の研究方法と倫理的基準に従って、研究を設計し、実行し、報告する。

2 研究を行う産業コーチは、独立した倫理委員会の承認を得てから研究を行う。 

3 研究を行う産業コーチは、誤解を招く可能性が最小限になるよう研究を計画する。

4 研究を行う産業コーチは、道徳的問題が不明瞭な際、産業コーチは独立した公的な倫理委員会、またはその他の適切な機構への諮問を通して問題の解決を求める。

5 研究を行う産業コーチは、クライエント、研究への参加者、アシスタント、その他の一緒に活動している人々の利益を最大限にし、危険を最小限に止める為に必要な手続きを踏む。 

6 研究を行う産業コーチは、引用した他者の研究を参考文献に明確に記載する。

7 研究を行う産業コーチは、他者の研究やデータの一部、または構成部分を自身のものとして公開しない。
 

(協力者への配慮と人権の尊重)

第24条 研究を行う産業コーチは、参加者の尊厳と福祉に対する懸念を持って適切に研究を行う。

2 研究を行う産業コーチは、個人や組織が書面での承諾、または他の法的根拠がある場合を除き、知り得た個人情報や企業や組織の機密情報が、特定されるような情報を開示しない。

3 研究を行う産業コーチは、可能な限り参加者に関する個人情報を保護することで、個人を特定できないようにし、議論が個人を特定可能な状況で参加者に害を及ぼすことのないようにする。
 

(研究における社会的責任)

第25条 研究を行う産業コーチは、研究が誤って使用される危険性のある個人的、経済的、社会的、組織的、または、政治的要素の影響を最小限に抑える。 

2 研究を行う産業コーチは、個人的な研究成果が誤って使用されたり提示されていることに気がついた場合は、その誤った使用や提示を正すための適切な処置を取る。 

3 研究を行う産業コーチは、研究が行われる環境や参加者への干渉を最小限に抑える。

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第7章 倫理問題との関わり

(倫理的問題の解決)

第26条  産業コーチは、産業コーチの倫理的責任が、法律または提携している組織の方針と相容れない場合、この倫理規定や法に基づいて、責任をもって対立を解決するための措置を講じる。

2 産業コーチは、法律違反あるいは倫理違反等の可能性を疑った場合は、それらが危害や損失を与える可能性と、法的違反あるいは倫理違反にあたる可能性のある該当条項、報告義務の条件があるかどうかを最初に特定する。 

3 産業コーチは、クライエントの法的な権利が侵害または脅かされる可能性があると判断した場合には、クライエントを守るために、しかるべき権限のある人物や機関に連絡するか、組織の方針に従ったり、適切な専門家へのコンサルテーションの依頼、書面に記録を残す等、必要な行動を起こさなくてはならない。 

4 前項において、産業コーチは、非公式に解決することが適切と思われる場合、産業コーチは、そのことをその個人に注意を喚起したり、問題への取り組みを適切に書面にする方法によって、その問題を解決するよう努める。問題の解決が得られない場合は、その問題を適切な権限のある人・機関(雇用主、行政機関)に報告する。

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第3編 雑則

第8章 倫理委員会

(倫理委員会の設置と役割)

第27条 日本産業コーチ協会に倫理委員会をおく。

2 倫理委員会は倫理規定の遵守と自己管理責任に関する啓発活動を推進する。

3 倫理委員会はこの倫理規定に関する産業コーチおよびクライエントからの苦情等に対しては誠実に対応する。

4 倫理委員会に関する事項は別途定める。

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第9章 実効性の確保

(相互啓発と違反者への対応)

第28条  産業コーチは倫理規定の施行に協力し、自己のみならず他資格者との相互啓発に努め、産業コーチ全体としての高い倫理的基準を維持することに努める。

2 産業コーチは、他の産業コーチの倫理に反する行為または不適切な行為に接したときは、その産業コーチに対し是正することを求め、必要な場合は倫理委員会に対し問題提起をする。また、倫理委員会による調査、意見聴取には誠意をもって協力する。

3 日本産業コーチ協会理事会は違反行為について処分を行うことができる。

4 処分の内容は以下のとおりとする。

(1)産業コーチに関する各種資格称号の取消し

(2)資格停止

(3)戒告(始末書提出)

(4)訓戒(始末書提出)

(5)始末書提出

5 被処分者が処分について異議がある時は、会長に対し再審査を求めることができる。
 

(処分決定機関)

第29条 前条第3項および第4項に基づく処分については、本部倫理委員会の議を経て協会が決定する。

 

附 則     この倫理規定は令和3年5月27日より施行する。

​以上

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